「日本人選手は武士道のおかげでドーピングしない」とか笑うしかない
NHKの調査によると、日本人選手がドーピングしないのは『武士道』のおかげ、だそうです。ハハハ。
ロシア陸上界を始め世界でドーピングが後を絶たないなか、日本はこれまでにオリンピックで1人も違反者を出していません。こうしたなか、早稲田大学大学院の研究グループの日比野幹生さんと間野義之教授などは、ロンドンオリンピックまでの3大会の日本のメダリスト男女6人ずつから聞き取り調査を行いました。
その結果、「ドーピングをしない理由」について、多くのメダリストが親や指導者から「ズルはしない」や「勝ち負けより一生懸命に頑張ることが大事」といった教えを受けたことを挙げました。また、「根底に武士道のような信念を持っている」といった回答も多く、「武士道」につながる日本のフェアプレーの精神が大きな要因になっているとみられます。
当然、いろいろな人がツッコみますよね。
1、サンプルが少ない。調査が雑。
2、経済合理性の問題よりも武士道の影響が強いとする理由が不明確。
などですね。
経済合理性の問題とは
海外ではドーピングはローリスク・ハイリターン
海外ではアスリートは、メダリストになるかならないかで扱いが天と地ほどの差になります。
北朝鮮など発展途上国では大邸宅を提供されたり、億単位のスポンサー料がついたり。
一方、結果を出さないアスリートはゴミのような扱い。
ドーピングがバレたとしてもゴミのような扱いであることにはかわりなく、中堅レベルの選手にとってドーピングはリスクが低いのですね。
そうなると、ドーピングがバレずに金メダルが取れるなら最高のリターンが得られるわけで、ドーピングをすることはローリスクハイリターンといえます。
日本ではハイリスク・ローリターン
日本では、スポーツ選手を支えているのは企業の場合が多いです。
多くが実業団に所属し、完全なるプロになるのは金メダルをとった一部の人だけです。
このように企業に属しているアスリートにとっては、もちろん結果は求められていますが、そこそこの結果さえ出していれば金メダルをとらなくても食べていけますし、金メダルをとったからといって大富豪のような生活が送れるなんてこともないです。
一方で、ドーピングなどしてしまうと一発解雇。生活の基盤を失ってしまいます。
ですから日本では、ドーピングはハイリスク・ローリターンな行為といえるのです。
ドーピングをしない理由を「武士道」に求めることはマイナス
日本のメディアには悪い癖があります。すぐに精神性を強調することです。
2015年に南アフリカを破った日本ラグビーにおいて、「日本人選手は俊敏で手先が器用で、ボールを扱うテクニックやパスの正確さに秀でている」「規律意識が強く組織プレーはすごい」といった神話を否定して、フィジカル・フィットネスを強化したことにより結果を出したにもかかわらず、他のスポーツではまだ精神性や器用さなど文化に根付いたものを日本人の強みとして、称揚します。そうしたほうが読者が共感して部数が売れるからですね。嘘なのに。
ドーピングについても、武士道という日本にある精神文化のおかげとすることは、読者の気分は良くなるでしょうが、かえって真実から目を背けることになりかねません。
武士の世界の流れをくむ相撲界では、いじめや体罰が横行し問題になりました。スポーツに武士道などという精神的概念を入れた結果が、部活におけるイジメや体罰の温床になっているという指摘もあり、この「武士道ドーピング阻害説」はスポーツ振興にとって重要なイジメや体罰の解決という課題に対して有害な作用をすることでしょう。
日本が誇るべきこと
日本がスポーツの世界において誇るべきことは、
自分の好きなスポーツを自分の意志で選ぶことができることだったり(中国やロシアでは国の命令で好きでもないスポーツをやらされます)、
平和な環境でスポーツをすることができることだったり(紛争地ではおちおちスポーツなどできません)、
そういうことであって、決して定義不明な「武士道」などではないはずです。
早稲田大学大学院の研究グループの日比野幹生さんと間野義之教授が実際にどんな研究をしているのかは不明ですが、NHKにはもっとまともな報道をしていただきたいと心から願うばかりです。