「過払い金請求で儲ける弁護士や司法書士はおかしい」と思う理由
過払い金請求で億単位で儲けている弁護士や司法書士がいる。
それはおかしい。
そういうと嫉妬のように思う人もいるかもしれないけれど、過払い金請求のプロセスやなぜ弁護士などだけに過払い金請求が認められているのかという社会意義を知れば、理解してもらえると思います。
まず、過払い金請求とは何か。
武富士やむじんくん、レイクなど消費者金融や商工ローンなどにお金を借りたとき、年約30%近い利息がついていました。
これは旧出資法上の制限ギリギリですが、実は利息制限法の15%の利息を超えていました。
この利息制限法を超える部分については、「債務者が任意に支払えばOK」というのが業界の法解釈でした。
ですから、債務者の多くは、消費者金融に請求されるがまま、高金利の支払いを余儀なくされていました。
しかし、平成18年1月13日に「任意に支払った」と判断する条件を厳しくして、事実上条件が満たされるものをなくす最高裁判決がだされました。 これにより、かなり多数の債務者(債務者だった人)につき、今まで消費者金融などに支払った額が元本と利息制限法内の利息の合計を遥かに超えるという現象が発生しました。
これが「過払い金」です。
払い過ぎたのだから返してもらおう、ということで、かつて消費者金融などにお金を借りたことのある人を募り、消費者金融などに過払い金請求を行う弁護士や認定司法書士が雨後の筍のように現れました。
「儲けることの何が悪い?」
報酬を得ることは悪ではない
消費者金融にお金を借りる人というのは、現実的に法律のことは知りません。手続きを自力でこなすことも不可能でしょう。 ですから、法律専門知識を有する弁護士や認定司法書士が、報酬を得て「過払い金請求」をすること自体は悪いことだとは思いません。 弁護士なども霞を食っていきているわけじゃありませんから。
しかし、過払い金請求のプロセスを知れば、法律専門知識を使って事件を解決しているわけじゃないことがわかります。
過払い金請求のプロセスに弁護士や司法書士はほとんど関与しない!
過払い金が返還されるまでのプロセスを知っているでしょうか。
1 まず、集客します。
CMや広告で、サラ金に金を借りたことのある人を集めます。 サラ金に金を借りるような人たちは、報酬の多寡なんて全然わかりません。 弁護士や司法書士に色々誤魔化されても、借金が減っただけで「ありがとう」って泣いて感謝するような人たちです。はっきりいって知名度勝負です。
2 債務者と面談
事務所にノコノコやってきた依頼者との面談を行います。 ときどきこれを事務員に任せて懲戒される弁護士や司法書士がいます。 これをしないと懲戒されるので弁護士などは「めんどくせぇな」と思いながら面談します。 といっても数分ですね……。
3 取引履歴の開示を請求
依頼者の氏名等がわかると、サラ金に依頼者との取引履歴の開示を請求します。 いつどれくらい無人機からお金を借りたかを教えてもらうわけです。 最高裁の判例(最三小判平成17年7月19日)で、サラ金には取引履歴を開示する義務がある、とされているので、だいたい開示してくれます。 「請求」というとなんだか難しそうですが、文章の雛形があり、事務所の事務員が作成しサラ金に郵送します。
4 過払い金の計算
取引履歴がサラ金から開示されたあと、どれくらいの過払い金があるかを計算します。 これも計算ソフトがあり、事務員がデータを入力するとパソコンが計算してくれます。
5 過払い金をサラ金に請求
これも雛形があるので、事務員が作成(債務者の名前と計算した金額を入れれば良い)して、郵送します。
6 サラ金などから返金がある
サラ金も慣れたもので、数ヶ月以内には返金してくれます。 サラ金から返金されたものから、事務所が実費、報酬や手数料を引いて、依頼者に返金します。
ということで、プロセスに関与するのはほぼ事務員です。 事務員がCMにより集めた大量の案件を処理できるくらい、簡単なお仕事なのです。 ちなみに事務員さんの時給は1000円程度です。 *1
依頼者が返金される額に納得しないときは、訴訟することになりますが、それは別料金。 このプロセス外の話です。そしてめったにあることではないです。
依頼者の利益を犠牲にして、自分の利益を図る事務所がある
過払い金請求の場合、着手金はゼロです。ですから、弁護士などの報酬は消費者金融等から返還されないと、得られない構造となっています。
つまり、弁護士等にとっては、消費者金融などにゴネられるくらいならば、多少ディスカウントしてでも過払い金を迅速に支払ってもらうほうが嬉しいのです。 そして正直、案件が済めば用なしになる依頼者よりも、幾つもの案件で付き合いのある消費者金融などの関係のほうが重要となります。
だから、あえて返還金を割り引いて、代わりに返還金を滞りなく支払ってもらうという密約を結ぶことも横行するのです。
これは、依頼者の利益を犠牲にして自分の利益を図る背信行為です。 ですから、この事実を認める弁護士や認定司法書士は存在しません。まさに密約です。*2
報酬が高くて何が悪い?
過払い金請求の報酬については、弁護士会や司法書士会で、一定の指針を出しています。 これに対して某事務所は「指針と異なる契約を結ぶことは許される」と反論しています。
自由競争の枠内ならば、サービスの良いところが報酬を高くしても合理性を有するでしょう。 たくさんの選択肢を選べるなら「報酬が高いと思うなら、他のところへ行けばいい」ということも可能でしょう。
しかし、過払い金請求において、自由競争が行われているでしょうか。 過払い金請求を扱えるのは弁護士と認定司法書士に限定されているのに、それでも「自由競争」というのでしょうか。 「自由な競争」というのは、どういう意味でしょうか。 知名度を上げるために血道をあげることをさすのでしょうか。
サラ金に金を借りる人が、弁護士などのサービス内容を吟味して報酬が適正なのかを判断できるでしょうか。 判断力に乏しい弱者だからこそサラ金に手を出したのではないでしょうか。 だからこそ過払い金請求の報酬について指針を設けているのではないでしょうか。
それにもかかわらず、指針を超える報酬を「自由競争だ」「適正な報酬だ」と正当化するのは、強弁でしょう。
過払い金請求を扱えるのは弁護士と認定司法書士に限定されているのは、素人である依頼者を食い物にしないためではないでしょうか。
指針より超過している報酬は、弁護士や司法書士からすれば、「大したことない金額」なのかもしれません。 過払い金請求をする依頼者の多くは所得が低い人達です。 その「大したことない金額」は依頼者にとっては貴重な貴重なお金なのではないでしょうか。
私が思うこと
大量生産できれば価格が低くなるのと同様、大量処理により報酬を低廉にして競争することこそ、「自由競争原理」なのではないでしょうか。
ほとんど事務員任せで専門性を発揮していないにもかかわらず、指針を超える報酬を得ている事務所は、モラルを欠くものです。
弁護士又は司法書士の品位を害するものとして、懲戒できるよう、弁護士会や司法書士会は対応するべきではないか、と考えます。
過払い金請求バブルはもうすぐ終わります。終わればこの問題もなくなるのだから放置しておこう。そんなつもりなら、弁護士会や司法書士会のことを「身内に甘い不正義の無能集団」と罵ることにします。