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手水鉢さんのカクシゴト

written by @chouzubachi

今残業代を払う経営者はアホ。働き方改革?寝言は寝ていえ。

2年放置しておけばチャラになる借金

今ここに2年放置しておけばチャラになる借金があるとする。
相手は金を返せと言ってこない。
自発的に借金を返したとしても相手は当たり前のように受け取るだけで、別に感謝もされない。
そして、借金を放置しておいても人間関係が壊れるというわけでもないし、むしろ普段こちらのほうが相手に恩をうっているくらいだ。

この場合に、自分からこの借金を返す人は、稀だろう。
立場が経営者となればなおさらで、会社に一円でも多くのお金を残そうと思う以上、この借金は踏み倒してしかるべきものだ。

 

わかりやすさのために、あえて借金という単語を使ったが、この2年でチャラになる借金というのは、労働債権のことだ。2年で消滅する(労基法115条)。

「この借金」を「残業代」と読み替えてみる。

今ここに2年放置しておけばチャラになる残業代があるとする。
相手は金を返せと言ってこない。
自発的に残業代を払ったとしても相手は当たり前のように受け取るだけで、別に感謝もされない。
そして、残業代を放置しておいても人間関係が壊れるというわけでもないし、むしろ普段こちらのほうが相手に恩をうっているくらいだ。

なのに残業代を支払う経営者がいるとすれば、それは経済的合理性を欠く、愚かな経営者だ。
もちろん、勇気を持って残業代を請求してくる労働者も存在するだろうけれども、法律上従わざるをえないとはいえ、その後の待遇を下げてやれば、帳尻はあう。
ほかの従業員が追随することはないだろう。

こういうと、「残業代を支払わないと最悪懲役がある」なんて労働法をかじったひとが言ってくるけれども、
残業代未払いで逮捕懲役される確率なんて、ほぼゼロだ。
前段階で残業代を払いなさいという労働基準監督署からの勧告があるので、そのときに支払えばいい。

 

ライフワークバランス? 働き方改革? 生産性?なにそれ?

残業代を払わなくて済む状態で、単位時間あたりの生産性を上げる努力は無駄だ。
結局、経営者(営業)が取ってきた仕事を社員が処理して売上を上げれば利益が上がるのだから、トータルの生産量が変わらないのであれば生産性を上げる努力は無駄だし、
かえって生産量が下がるおそれのある「生産性向上」対策はむしろリスクだ。

このような状況の中で、どうして経営者がリスクを取って従業員(労働者)のためにリスクを取らないといけないのか。

ライフワークバランス? 従業員が増えたら管理コストも増大。そんなのするわけがない。

 

マスコミやネットで「ライフワークバランス」「働き方改革」の素晴らしさを喧伝しても実現することはない

マスコミやネット上で、ライフワークバランスや働き方改革が叫ばれるようになった。
過労死や若者の「金なし、時間なし、恋人なし」状態、育児環境などを改善しようということらしいけれども、ライフワークバランスや働き方改革をするかどうかを決めるのは経営者なので、労働者が「そうだそうだ」と諸手を挙げて賛成しても、経済的合理性がない行動をするわけがない。
まったく絵に描いた餅だ。
「ライフワークバランス」などと言っているマスコミ自体が、激務でひどい労働環境を改善することができていない。
「ライフワークバランスの実現」なんてものは、ドラえもんの「あんなこといいな。できたらいいな」くらいの夢物語だ。

 

夢物語を実現するためには

社員に残業させると経営者にとって損な状況を作らないと、過労死対策やライフワークバランスが実現することはない。
そして、その議論が全くなされていない。
社会にとってマイナスだの、未来の日本が危ういだの。そんなこと来年存続しているかもわからない会社の経営者にとってどうでもいいのだ。
逆に言えば、「労働者が長時間働くと会社にとって損」な状況になれば、必ず経営者はそれに従う。

ここで冒頭の「2年でチャラになる借金」の話に戻る。
労働債権の消滅時効は2年。つまり、労働者が請求することなく2年放置すると消える。
多くの労働者は請求をしない。したがって、殆どの残業代はただも同然だ。
この状況を、労働者が気軽に残業代を請求できる」ように変えれば必ず長時間労働は消える。
なぜなら、「労働者が長時間働くと会社にとって損」な状況になるからだ。
その方法はかんたん。

消滅時効期間を延長すること。
あるいは、退職後六ヶ月まで時効期間が停止することだ。*1
つまり、退職したときにこれまでの残業代を請求できる状況にする。
こうすれば、長時間労働は消えるだろう。

現代は短期時効の趣旨にそぐわない

労働債権が2年という短期時効なのは、証拠管理が大変だとか、権利を放置していた以上保護に値しないとか、そのような趣旨なのだけれど、IT化されて勤怠管理は容易だし、経営者からの報復が怖くて残業代を請求できないのにそれを「放置した」と言われても納得はできないだろう。

いままでどうして労組や民主や社民系政党などの労働者側の団体がこの規定を変えようとしてこなかったのか、のほうが謎だ。

彼らの言い分はおそらく、本来賃金債権は民法上では消滅時効期間が1年。労基法115条はそれを延長するものなのだと。

けれど、そもそも民法のほうが現代にそぐわない(当時はITはない)のであり、それを2年に伸ばしたところで、経営者に請求できないので同じだ。

ちなみに、民法が改正される予定で、職業別短期時効制度は撤廃される。にもかかわらず、労基法は残るらしい。*2

予想される反論

このように、残業代を請求できる環境を整えても、自宅への持ち帰り(闇残業)が増えたり、トータルの仕事量が変わらない、という反論が考えられる。
しかし、工場での労働を例に取ると、そのような仕事は持ち帰りは不可能だ。
持ち帰りが可能なのは、主に資料の作成などだろう。
しかし、会社全体で処理できる仕事量は制限される(会社の仕事は持ち帰れる仕事ばかりではないので、そこがボトルネックになる)し、無駄な会議と資料の作成は減るだろう。

 仮に持ち帰り残業があったとしても、それは残業代が消滅することにはならない。もちろん証拠を残さないといけないが、後々請求が可能だ。

会社としては、見えない債務があることのほうが嫌なので、仕事を持ち帰るのは禁止するだろう。

したがって、闇残業はさほど増えないと思う。第一、闇残業しなくてはならないほど激務の会社なら、今も激務なので仕事量は変わらないだろう。現状維持と同じではないか。

 

経済合理性で経営者を動かすしかない

経済合理性で経営者を動かし、労務環境を変えようとする議論がないわけではない。

たとえば、

労働関係法を整備強化するよりも残業代を計上せず払うべき所得税を逃れたみたいな脱税案件としてムッキムキした方が税収伸びるんじゃないかと思ったりする - Togetterまとめ

このようなスキームだ。

このように外部の人間に頼らざるを得ないのは、労働者が直接経営者に「残業代を支払ってください」といえないことにある。言えないから外部の人に言ってもらいたいのだ。

しかし、国税労働基準監督署も、人的リソースが圧倒的に足りない。現状を変えることなど不可能だ。

だから、解決の根本は、社員(労働者、従業員)が経営者に「支払え」といえるようにすることで、それは、会社をやめたときに「これまでの残業代全部はらえ」といえるようにするのが一番だと思う。

そしてその債権には利息がつく(年利14.6%!!)ので、そう考えると、経営者はきちんと残業代を支払わねば、大損なので、きっちり払うだろうし、余計な残業は許さなくなるだろう。

 

*1:似たものとして、夫婦間の権利の時効停止という民法159条がある。夫婦間では関係が強すぎて、時効を中断させる手立てがないのでこの規定が設けられた。日本の雇用もメンバーシップ型と言われるように関係が濃い。にもかかわらず似た規定が存在しないのはおかしいだろう

*2:民法(債権法)改正 未払賃金の時効期間

http://center2004.ti-da.net/e5566945.html

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